Royal Bank of Scotlandにおける、TBMによる経営戦略の推進

“これまでのTBMのROIは非常に大きいものでした。私たちはITコストを20%削減しました。以前はビジネスケースやプログラムの作成、さらにそれらのコスト計算に3~4週間もかけていましたが、今では3~4時間、最大でも1日以内にできるようになりました。イノベーションをより迅速に市場に提供するモデルをTBMで構築できたことが、ビジネスの収益に結びつきました”

エグゼクティブサマリー

Royal Bank of Scotland (RBS)のTBM(Technology Business Management)チームは、テクノロジーのコスト構造を理解し、テクノロジーのコストと利用部門を効果的にマッピングするために結成されました。今日、TBMは戦略的意思決定を支え、ビジネス目標に沿ったコスト削減の最前線と中核を担っています。アプリケーションの合理化は、関連するすべてのコストとアプリケーションをサポートするスタック全体をより効果的に考慮し、利用部門があらゆる面でのコスト削減策を検討し、完全な情報に基づいて優先順位を決定できるように進めています。大規模な全社的チームが、TBMを活用して問題解決に取り組み、IT部門をビジネスの戦略的パートナーとして位置づけています。

RBS社概要

RBSは、英国を本拠地とした銀行及び金融サービス会社であり、本社はエジンバラにあります。RBSは幅広い商品やサービスを、個人、中小企業、大企業や機関投資家といった顧客に、Royal Bank of ScotlandとNatWestの2つの主な子会社ならびにUlster BankやCouttsを含む他の多くの有名なブランドを通じて提供しています。

2008年の金融危機の後、Royal Bank of Scotland(RBS)は世界中の他の銀行と同じように、そのビジネスモデルの見直しを実施しました。そこで明らかになったのは、顧客と顧客にサービスを提供する従業員に再度目を向け、テクノロジーをバックオフィスの機能としてだけでなく、イノベーションと成長のエンジンとして取り入れ、より費用対効果の高い方法で利用する必要があるということでした。このことは、テクノロジーが急速に顧客にとって重要な要素となったため、喫緊の課題でした。

「全トランザクションのうち93パーセントがテクノロジーで処理されています」とRBSの前ビジネス管理、テクノロジー責任者のナシリ・オマール(Nasir Omar)氏は述べています。「ここ数年の私たちのデジタルジャーニーはとても驚異的なものでした。取引の自動化とモバイルバンキングアプリがその良い例です。現在、モバイルアプリのユーザーは約400万人で、40%はログインに生体認証を利用しています。RBSにおけるデジタル化の取り組みは、絶対的に重要な優先事項となっています」

しかしながら、デジタルイノベーションに焦点を当てるのと同様に重要なことは、より費用対効果を高くするということです。銀行業界では、銀行の「効率比」というものがあります。これは、収益とコストを比較するものです。比率が低いほど、銀行は資金をより適切に管理できています。RBSのケースでは、企業向けと機関投資家向け部門の目標は、50%未満の比率にすることです。まだ完了はしていませんが、この戦略におけるコスト削減策により、ITの年間予算を既に20%削減しています。

一方で、顧客を獲得し維持するための新製品やサービスは、テクノロジーに大きく依存しています。つまり、難しい判断を賢明に下すことが要求されます。

「私たちはお客様により良いサービスを提供するために変革を起こす必要があります」と、RBSの企業および機関投資家向け部門のCIO、ジョン・スミス(John Smith)氏は述べています。「私たちは将来の成長に向けて設定した、いくつかのとても明確なゴールに焦点を当てています。つまり、私たちが1ポンドを顧客の利益にならないことに費やすことは、すなわち無駄なお金となるのです」

イノベーションをより迅速に市場に提供

スミス氏にとって幸いなことに、彼はRBSの比較的成熟したTBMシステムを利用して、そのIT投資を顧客中心のイノベーションにシフトすることができました。

「私たちのゴールは私たちのコストと収入の比率を改善することであり、TBMはその目標を達成するために提供されているプログラムの90%に関与しています」とオマール氏は話します。「このツールは、いくつかのビジネスインパクトをモデル化できます」

ただし、単にコスト削減だけをすれば良いわけではありません。テクノロジー資産をスリム化し、ビジネスのしなやかさと敏捷性を高めることも重要です。これは、TBMがRBSのビジネスパフォーマンスの向上に役立ったもう1つの理由です。

「これまでのTBMのROIは非常に大きいものでした」とオマール氏は続けます。「私たちはITコストを20%削減することができました。以前はビジネスケースやプログラムの作成、さらにそれらのコスト計算に3~4週間もかけていましたが、今では3~4時間、最大でも1日以内にできるようになりました。イノベーションをより迅速に市場に提供するモデルをTBMで構築できたことが、ビジネスの収益に結びつきました」

未来に焦点を当てる

RBSは、顧客サービスを提供する方法を再発明し、再活性化するために、将来にしっかりと焦点を当てています。テクノロジーは、もはやとりあえず利用する、というものではありません。銀行業務はテクノロジーによって日々変革されています。顧客対応の活動から、コスト削減と市場投入までの時間を短縮するために必要なインフラストラクチャとアーキテクチャの決定に至るまで、テクノロジーは戦略的な意思決定をする上で、中心的な役割を果たしています。

「TBM導入の早い段階での質問は『なぜそのコストが私たちに関連するのか?』 または『テクノロジーをどのように利用しているのか?』でした」とRBSのTBMオフィス責任者、ロバート・グラッシー(Robert Grassie)氏は述べています。「よって、ストレージやデスクトップなどを分析し、ある程度のコスト削減を図ろうとしていました。何年もかけて、質問内容は、はるかに戦略的なものに変わりました。現在の質問は、『ビジネスをどのように再構築できるか?』 または『これを行った場合、ビジネスへの影響はどうなるか?』 あるいは『このテクノロジーを採用する場合、ビジネスケースに何を入れる必要があるか?』に進化しています」

「現在、私たちはビジネスの多くの側面において「頼りになる」情報源となりました。移転価格、トレーディングフロアの活動、アプリケーションの合理化に関する質問であれ、これらの活動はすべてビジネスに直結する活動であり、我々は何らかの形で関与しています」

アプリケーションの合理化

良い成功例がアプリケーションの合理化です。現在、ほとんどの大規模な組織で、アプリケーションの合理化の取り組みが進行中であり、RBSも例外ではありません。失敗すると、合理化の取り組みは、顧客サービスを提供し、収益と市場シェアを拡大し、業務効率化をし、必要なコスト削減策を実行する組織の能力に、逆に悪影響を与える可能性があります。

RBSでは、すべてのアプリケーション合理化プログラムは、まずTBMオフィスを通じて実行されます。オマール氏によれば、ある取り組みでは、ビジネスケースで最初に提案された節約額の3倍の効果を達成することができました。

「これらのプロジェクトをTBMオフィスで実行することにより、コスト削減の規模を2倍から3倍に増やすことができることを証明しました」とオマール氏は述べ、コスト削減は実は簡単な部分であると述べました。

「コスト削減はいつでもできます。重要なことは、ビジネスの遂行に支障をきたすことなく、効率を最大化し可能な限り迅速に実行することです」 オマール氏は続けます。「顧客にビジネスイノベーションを提供しようとしているビジネス部門に悪影響を与えることなく、最大限の効率とスピードでコスト削減を実現できるようなTBM組織を作りたいと考えています」

事業部門の再構築

また、顧客サービスへ注力するために、事業再構築の一環として、RBSは事業部門を精査し、一部を廃止したり、再構築したりしました。TBMはこれらの取り組みに役立っており、ビジネスの意思決定者に対して、これらの組織の運営に役立つ深い知見を提供しています。もちろん、重要なのは利益ですが、どのビジネスでもオペレーションの多くはテクノロジーによって実現されているので、TBMにより、業務効率(効率比の目標)を簡単に把握できます。

「TBMがこのように広範囲に利用されているため、投資収益率を大規模に示すことができます」とグラッシー氏は述べています。「事業再構築、直販グループ、保険部門、またはWilliams & Glyn事業のいずれに関するものであっても、無駄なコストや、削減可能なその他のコストを正確に評価することができます。そして、そのおかげで、私たちは小さいけれどより効率的な組織へと生まれ変わりました」

さらに、孤立したインフラストラクチャや管理されたテスト環境などを分析することで、効率化と利用量に関する新しいプロジェクトが立ち上がり、クラウドやその他のイノベーションに関するビジネス上の意思決定につながりました。

「TBMは、私たちが所有する資産とキャパシティを解放する方法を理解するのに役立ちました。これにより、イノベーションを起こす余裕ができ、顧客により良いサービスを提供できるようになりました」とスミス氏は述べています。

クラウドソーシングによる問題解決

TBMは現在RBS全体に普及しています。四半期ごとに20,000を超えるレポートを利用する500人のユーザーがいます。TBMオフィスは、組織全体の他のビジネス領域を支援するセンター・オブ・エクセレンスとして機能し、何百人もの意思決定者がTBMレポートを活用しています。

「TBMの原則とApptioを利用できるように、他部門のメンバーをトレーニングすることで、スケーラブルなTBMオフィスを構築しました」とオマール氏は述べています。「TBMオフィスのメンバー以外にも、各事業部門の中にTBMを使いこなすエキスパートが存在しています。このように多数のユーザーがいることで、より戦略的なイニシアチブに集中でき、他のメンバーにはコスト削減など、より戦術的な課題に集中してもらうことができるようになりました」

TBMオフィスは、数分以内に回答できる質問から、回答に数時間または数日を要するより複雑なプロジェクトまで、年間600から1,000件の問い合わせに対応します。「TBMモデルを利用することで、詳細まで掘り下げて分析し、そのデータをチームとチームリーダーに提供し、行動を起こしてもらうことが可能になりました。私たちは課題をクラウドソーシングで解決する能力を持っていると言えます」とスミス氏は述べています。

このTBMを介したクラウドソーシングは、大きな目標を達成する際にとても有益です。

「考えてみてください」とスミス氏は続けます。「私個人では、世界中に分散している13,500台のサーバーのリストをもとに、多くのことを行うことはできません。また1台のサーバーに対して1人が対処しても、大きな違いは生み出せません。しかしながら、2,000人が問題に取り組み、それぞれが数台のサーバーに対処したらどうでしょうか? それは非常にスケールアップした話になります。つまりは、我々が作り上げた仕組みは、組織全体を動員することなのです」

TBMオフィスが組織として成熟するにつれて、グラッシー氏とそのチームは単に数字を追跡する存在から、RBSの経営戦略をサポートし、ビジネスのイノベーションとサービスを可能にする重要な役割を果たす、信頼できるパートナーとして見られるようになりました。

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