ITコストのショーバックとは、利用部門がコントロールできるコスト抑制の施策、得られるビジネス価値、さらにコスト構造を改善する潜在的な方法について利用部門に提示し、コストを抑制していく戦略です。しかし、コスト配賦が推測に基づいたものであったり、サービスのコスト構成があいまいであれば、IT部門からの請求内容が根拠に欠くものであるとして、利用部門から突き返されてしまいます。(「このITコストはどのように計算されているのですか?内容を理解できないものに対価を支払うことはできません」)
各サービスに対して根拠のある単価(例:メールアカウント1件ごとの金額、ホットストレージの1GBごとの金額)を示すデータをはじめ、裁量的な人員数に基づいた配分や均一的なコスト配分ではなく、実際の利用状況に基づいたコスト配分を示すデータを用いて、ITコストのショーバックの基礎を築いてください。
ITコストのショーバックを活用して、ITコストの説明責任を確立する3つのステップをご紹介します。
#1 コスト構造を理解する
ITコストのショーバックプロセスを可能にするためには、それぞれのサービスやアプリケーションに関連している全コストと利用部門の利用状況の両方を可視化する必要があります。ITのサービスやアプリケーションに関する根拠のあるコストモデルが存在すると、利用部門からの信頼が高まるだけではなく、さまざまなコスト要素(作業工数、ライセンシングなど)が時間の経過とともに変化する中でも、正確性を維持することができます。コストモデルの変化を手作業で捕捉しようとすると、膨大な工数がかかるだけではなく、エラーも発生しやすくなります。より良いアプローチは、財務データと運用データを自動的にITのコストモデルに取り込むことです。このことにより、コストモデルが常に最新のものであることを示すことができます。ITコストのショーバックプロセス向けのコストモデルを長期的に有効に保つためには、自動化されたデータ取り込みが鍵となります。
#2 ITコストのショーバックを業務に組み込む
ITコストのショーバックには、サービスのコスト構造を透明にすることで、行動変容を促すという期待があります。しかし、この透明性は、利用部門ごとに調査し、定義していく必要があります。利用部門に提供するITの請求内容には、コストを抑制するために利用部門が実施できる方策を示します。ただし、請求内容を送付するだけで、業務は完了しません。ITコストのショーバックプロセスを日常業務に組み込むことで、利用部門とITファイナンスチームとの継続的な対話が生まれます。利用部門がインフラコストの変更に気づいていないという状況を想像してみてください(オンプレミスからクラウドへの移行など)。このような変更は利用部門のITコストに影響を与えます。利用部門に請求されるITコストの変更について、IT部門からの請求内容が通知される前に対話を行う必要があります。逆に言うと、利用部門として自部門のテクノロジー・スタックが深化することが分かれば(新サービスの採用や高価なSaaSサービスなど)、ITファイナンスチームと協力して、変更に伴う財務的影響に備えることができます。次の質問への回答についても、同様のシナリオを検討できます:
- 各利用部門のサービスコストはいくらか?
- 利用部門ごとの四半期ITコストはいくら?
- 利用部門の組織階層ごとのサービスコストはいくらか?
- 最も大きなサービスコストは何か?
- 今月は、あるサービスを何単位利用したか?
- 各利用部門は、サービスを何単位利用したか?
- 各利用部門の予算と実績の差異はどれぐらいか?
- 今月の利用部門に対する請求内容に影響を与えたサービス価格の変更は何か?
- 利用部門に対する請求内容に影響を与えたサービスの利用状況の変化は何か?
- 利用部門に対する請求内容に影響を与えることになったコスト配賦の変更は何か?
#3 コストポートフォリオの最適化
利用部門はITコストを範囲内に収める必要があります。ITコストを可視化し、どのような方策を取るべきかを理解することが、ITコストのショーバックプロセス成功の大きな鍵となります。そして、ITコストのショーバックプロセスを定着させると、コストポートフォリオが最適化されて、ビジネス価値を生み出します。利用部門は、自部門のビジネスを成長させるためのテクノロジーソリューションに投資していくために、既存のサービスのコストを最小限にする必要があります。例えば、提案依頼(RFP)プロセスを自動化して販売サイクルを短縮したり、オンラインでのオンボーディングプロセスにより顧客に価値を感じていただくまでの時間(TTV)を加速化したりすることです。
ITコストのショーバックはITの価値提供に関する対話を促進
ITコストのショーバックは、ITの価値を伝えるための独立したプロセスです。また、多くの場合、最初の段階において、「IT」という一行で片づけてしまいがちな費用の構成について、利用部門の理解を促し、コストを大幅に抑制し、ビジネス成果を向上させるための方策を示すことができます。焦点は、インプット (インフラコスト) ではなく、IT部門のアウトプット(利用部門へのサービス)に当てられます。このようなアウトプットを、利用業部門が理解でき(例:価格 x 数量)、コントロールできる(例:推測に基づいたコスト配賦ではなく利用状況に基づいたコスト配賦)用語で伝えることができれば、ITコストのショーバックプロセスにより、クロスチャージや予算調整といった複雑なステップを経ることなく、ITの提供価値に関する対話を促進できます。
ApptioOneは、業界標準のTBMタクソノミーを活用して、ITサービスのコストの計測と管理を行い、納得感のあるサービスコストモデルを作り上げます。さらに、ApptioOne Billingを利用して、ITコストのショーバックを導入すると、利用部門にわかりやすい形で、コスト変更の詳細な説明を行うことができ、また、より詳細な分析も行うことができます。
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