クラウドサービスの請求書には何百万行もの膨大で理解し難いデータが並んでいますが、結局のところクラウドにいくら使ったかを示しています。しかし、この膨大な情報から、クラウドの運用コストにおいて意味のある質問に答え、これらのコスト傾向を把握するには、特定の指標をもって管理することが必要です。
以前、AWS支出を把握するためのコスト指標の重要性についてご説明してから、業界全体でますます、FinOpsの実践が成熟しています。あらゆるパブリッククラウド管理において需要が高まっています。クラウドベンダー、特にAzureでは、ビリング(請求)エクスポートでの粒度を向上させることで、この作業をより簡単にしました。今日のマルチクラウド利用が進む世界では、Apptioは、適切なコスト指標、多くのステイクホルダーのさまざまな質問に答えるために重要となる指標を明確にすることに重点を置いています。この記事では、この指標に関する疑問にお答えする、役立つ3種類のコスト指標を説明し、最近Cloudabilityが拡張したAzureコストリストがどのようにサポートしているかをご紹介します。
FinOpsのInform(現状理解)において過小評価されている側面
FinOpsの実践は、消費ベースで変動するパブリッククラウドの支出モデルに対し、財務上の説明責任を果たすことを目的とし、Informから始まる3つのフェーズで構成されています。ステイクホルダーに対しては、何百万行もの請求行をビジネスグループにマッピングし、クラウドコストの「可視化と配賦」を周知する一方で、企業にとって意味のある方法で、ビジネス軸でのコストを正確に把握できることが極めて重要です。AWSには、各顧客のCURファイル内に14以上の標準コスト列があることを考慮してください。仮想マシン(VM)、マネージドデータベース、またはその他のクラウドリソースのコストを測定する場合、最適な指標は何でしょうか。また、クラウド全体に適応できる標準的なアプローチは何でしょうか。
クラウドコスト管理における3つの方法
1. 請求されたコスト
まず、コストを測定する最も明白な方法、つまり、その月のクラウドベンダーからの請求書情報を読み解きます。これは、適用されているすべてのカスタム価格契約、前払いしたリザーブドインスタンス(RI)やSavings Plan(SP)などのコミットメントを考慮する必要があります。これは請求データのエクスポートで常に表示されるとは限られません。たとえば、月全体の前払いRIの対象となるVMの請求コストは$0になります。逆に、月末に多額の前払いコミットメントを購入すると、ほとんど消費していないにもかかわらず、多額の請求コストが発生することになります。
キャッシュフローの観点から、そしてITファイナンスチームにとって、このコストに関する見解は重要ですが、多くの場合、クラウド運用において適切な真のコストを測定していているとは言えません。そのため、この指標は通常ショーバックやチャージバックには使用されません。Cloudabilityは、各クラウドベンダーからエクスポートした詳細な請求情報から、請求コストをマッピングし、これを(総)コスト指標として利用できるようにします。
2. 消費コスト
次は、特定期間(多くの場合1か月)、または一連のクラウドリソースを対象として、消費されているクラウドコストを計算することです。ここでは通常、カスタム価格契約も考慮しますが(エンドユーザーに引き継がれていない場合)、主な違いはコミットメントの処理です。
このコストを得るには、消費コミットメントの総コストを、消費が発生した場所とタイミングにマッピングする必要があります。たとえば、ある月にVMが特定のRI(または複数のRIとSP)を利用したとします。この場合、VMの総コストには、VMが消費したコミットメントの正確な金額と、VMがカバーされていない時間帯のオンデマンド課金が含まれます。
この指標を計算するときは、コミットメントの多額の前払い金額に関連するスパイクも無視する必要があります。これらの料金は、キャッシュの観点で重要ですが、将来の使用量を表します。
この指標は、コストの傾向をより正確に把握できるだけでなく、ショーバックやチャージバックの目的で広く利用できます。これは真のコスト指標であると言えるでしょう。Cloudabilityでは、コスト(償却後)指標により、複数のコミットメント構造とクラウドベンダーを利用できます。
3. リストコスト
さまざまな割引やコミットメントが、クラウド使用に対する料金に継続的に影響を及ぼします。単一のVMには、請求期間中に適用されるさまざまな時間料金を設定できます。このような場合、リストコスト指標を表示させるのが便利です。そうすることで、割引やコミットメントの範囲に影響を与えられないことが多いデリバリーチームやエンジニアは、クラウド価格に一貫性を持たせることができ、資金計画や効率化のイニシアチブの影響を測定するのに役立ちます。この指標により、FinOpsクラウドセンターオブエクセレンス(CCoE)は、組織全体で異なるコスト削減を定量化することもできます。
Cloudabilityでは、詳細なビリングエクスポートとAPIベースの価格シートのデータを組み合わせることで、この指標の計算が可能になります。
Apptioは、Azure ComputeおよびAzure Databaseサービスのコスト(リスト)指標のサポートを開始したことをお知らせします(すでにAWSサービスは提供済。Azureサービスへの追加サポートについても対応予定)。Azure支出を管理するお客様は、Cloudability全体でこの指標を今すぐ使用できます。
指標を組み合わせ、コスト削減を実現
コスト(リスト)は「元のコスト」を示し、コスト(償却後)はクラウドを運用するためにお客様の有効なコスト(または真のコスト)を示します。したがってこれらの指標の差を使い、コミットメントとスポットインスタンスにより実現した節約を正確に定量化できます。状況に応じて、デルタにはカスタム価格契約による節約も含まれる場合があります(このような契約を取得するために調整した指標が必要な場合は、以下の表を参照)。
上記のダッシュボードは、リストコストと償却後コストをグラフやテーブルでひとつにまとめて、可視化する方法を示しています。また、ダッシュボードでは、「実現された節約(Realized Savings)」と呼ばれるCloudabilityのビジネス指標も活用します。これは、顧客によって定義され、ソリューション全体でスタンドアロンメトリックとして使用できます。重要なことは、これらのすべての指標をレポートで使用できることです。チーム、アプリケーション、または個々のリソースレベルでの使用量に節約を関連付けることができます。
マルチクラウドコスト指標の概要
Cloudabilityでは、目の前のジョブの指標を柔軟に選択できますが、特に、各ベンダーによって請求内でコミットメントタイプを処理する方法に違いがあるため、上記の指標が、基礎的な料金をどのように表しているかを理解することは有用です。次の表は、コミットメントの対象とコミットメントのサインアップ料金が主要な指標に与える影響をまとめたものです。
(総) コスト |
(調整後) コスト |
(償却後) コスト |
(調整・償却後) コスト |
(リスト) コスト |
|
---|---|---|---|---|---|
前払いコミットメントなし | |||||
サインアップ料金 | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 該当なし |
AWS SPの 使用 |
オンデマンドコスト | オンデマンドコスト* | 消費コミットメント(月次コンポーネント) | 消費コミットメント(月次コンポーネント)* | パブリックオンデマンドコスト |
AWS RIの 使用 |
月次コンポーネント消費 | 月次コンポーネント消費* | 消費コミットメント(月次コンポーネント) | 消費コミットメント(月次コンポーネント)* | パブリックオンデマンドコスト |
Azure RIの 使用 |
月次コンポーネント消費* | 月次コンポーネント消費* | 消費コミットメント(月次コンポーネント)* | 消費コミットメント(月次コンポーネント)* | パブリックオンデマンドコスト |
部分的な前払いコミットメント | |||||
サインアップ料金 AWS(SP/RI) |
前払い料金 | 前払い料金* | 常に$0 | 常に$0 | 常に$0 |
AWS SPの 使用 |
オンデマンドコスト | オンデマンドコスト* | 消費コミットメント(毎月&前払いコンポーネント) | 消費コミットメント(毎月&前払いコンポーネント)* | パブリックオンデマンドコスト |
AWS RIの 使用 |
月次コンポーネント消費 | 月次コンポーネント消費* | 消費コミットメント(毎月&前払いコンポーネント) | 消費コミットメント(毎月&前払いコンポーネント)* | パブリックオンデマンドコスト |
Azure RIの 使用 |
該当なし | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 該当なし |
すべての前払いコミットメント | |||||
サインアップ料金 AWS(SP/RI) |
前払い料金 | 前払い料金* | 常に$0 | 常に$0 | 常に$0 |
サインアップ料金 Azure RI |
前払い料金* | 前払い料金* | 常に$0 | 常に$0 | 常に$0 |
AWS SPの 使用 |
オンデマンドコスト | オンデマンドコスト* | 消費コミットメント(前払いコンポーネント) | 消費コミットメント(前払いコンポーネント)* | パブリックオンデマンドコスト |
AWS RIの 使用 |
常に$0 | 常に$0 | 消費コミットメント(前払いコンポーネント) | 消費コミットメント(前払いコンポーネント)* | パブリックオンデマンドコスト |
Azure RIの 使用 |
常に$0 | 常に$0 | 消費コミットメント(前払いコンポーネント)* | 消費コミットメント(前払いコンポーネント)* | パブリックオンデマンドコスト |
* カスタム価格契約が反映されていることを示します
。注:
- Azureのビリングエクスポートでは、常にカスタム価格契約を現地通貨で直接反映します。Cloudabilityのカスタム価格モジュールは、AWSのデータで同じ結果を得るために「調整した」指標を表示することができます。
- AWSがSavings Plansの対象となる使用に対してオンデマンドコストを全額使用していることは驚くべきことです。これは、エクスポート内の追加の「negation」行によって相殺されます。
- Cloudabilityは、サインアップ料金のコスト(リスト)を$0として表します。コミットメントが削減される際に、料金が二重にかかってしまうのを避けるためです。
全クラウドコストにおける一貫した管理
当社が目指すのは、総コストと同様に、全クラウドコストで機能する一連の指標を提供して、毎月の請求を明らかにし、クラウドを運用するための真のコストを測定する一貫した手段を提供することです。コスト(償却後)とコスト(リスト)指標は、この一貫性を提供し、節約を定量化するためのCCOEの取り組みをサポートします。今後、Google Cloudのコスト測定に焦点を当てた発表を行いますので、引き続きご注目ください。Cloudabilityがクラウド投資のコストを測定するのにどのように役立つかについてもぜひご確認ください。